アラサーちゃん

バロウズの妻のアラサーちゃんのレビュー・感想・評価

バロウズの妻(2000年製作の映画)
3.5
そして、ジョーンは頭にグラスを載せ、バロウズは拳銃を握った……
四人の作家、二つの殺人事件、一つの真実。
ビート文学を代表する作家、ウィリアム・バロウズは、なぜ妻を撃ち殺したのか。その事件が起こるまでの友人たちとの交流や、交錯する彼らの複雑な恋愛模様が描かれている。

人を惹きつける奔放で精力的な魅力の持ち主、ルシアン・カー。ノーマン・リーダスが演じてます。美しい。主人公のコートニー・ラヴも美しさの全盛期ですけどどっちもほんとに罪なくらい綺麗。
コートニー・ラヴは、ドラッグやタバコに溺れるシーンは絵になるけど、貞節的だという設定はあまりピンとこないん。でも「撃ちなさいよ」みたいなセリフで口元がアップになるシーンは、コートニーの唇だからこそいいシーンになるよね(笑)
バロウズを演じるのは「24」前のキーファー・サザーランド。帽子とサングラスかけると一気におっさんくさくなるけど、素顔はどこか小憎たらしい顔していて、オーソン・ウェルズにやっぱり似ている。

最低な生活を強いられ、めちゃくちゃ魅力的な昔の恋人に惹かれながらも(どちらも駆け引きがうまい)、若い男に夢中の夫を辛抱強く待つ妻。
その妻の愛を最後には確信してくれただけでまあ良かったかなと。こういう細微な点は実際のところときっと違うところもあるんでしょうが。

映像や演出的な煙たい雰囲気と、エロティックな恋愛に傾いていかないところはとてもいいんだけど、全体を通してちょっと粗い作りでカットも安っぽく、素人感は否めないかな。一級品ではないけど充分に楽しめる映画だと思います。
こうやって最後に事件のエピソードを持ってくるプロットは好きなタイプ。前座をダラダラと作っておいてシンプルに事件を描ききる。パッと思いつく作品がないんだけど。「リチャード・ニクソン暗殺を企てた男」とか、そんな感じじゃなかったかな。

ビート文学の作家たちの交流や、事欠かないトラブル事件はやっぱり映画の題材には相応しいらしく、最近、ハリポタのラドクリフくんがアレン・ギンズバーグ役で作品ができているみたい。ちょっと気になる。
そちらはアレン視点だし、バロウズの妻殺害ではなく彼らに渦巻く同性愛が本筋になっているらしく、そこのところルシアン・カーが最初に起こした殺人の理由や関係性も少し違うみたいなので…まあ、バロウズが最終的に妻を愛していたのかっていう点を含めて、主人公をどこに置くかによって歴史ってそういうもんなんだろうね…