シズヲ

ヤング・オーナーズのシズヲのレビュー・感想・評価

ヤング・オーナーズ(1959年製作の映画)
3.0
保安官パトリック・ウェイン&被告人デニス・ホッパー!メキシコ人を挑発して射殺したアメリカ人の裁判を巡る西部劇。米墨戦争直後の1840年代後半を舞台にした話であり、アメリカに帰属して間もない(それ故に白人から蔑まれる風潮が残っている)元メキシコ領の様子が描かれている。冒頭から法整備などの未発達ぶりが顕著に描写される他、「この判決でアメリカの正義が試される」という言及など、西部開拓時代初期の話ながらも“アメリカとしての秩序”が一つのテーマになっているのが印象的。メキシコ人とアメリカ人の微妙な線引きなど、人種的な緊張感も垣間見えるのはそれなりに興味深い。

尤も長引く審議の様子はほぼ書かれず、尚かつ作中の主題も専ら“話の緊張感を作るためのシチュエーション”程度に使われているので、そのへんの掘り下げ的には大分物足りない。人種や法整備、倫理についてもっと描けそうなのに肝心の議論を嫌がった感が否めない。主役であるパトリック・ウェインも相変わらず華やかさに欠けているうえ、話のテーマに対しての能動的なアプローチを殆ど見せないのでいまいち作劇的な面白味がない。そのくせラブロマンスで水増ししてくるので、余計にしょっぱい印象が強い(難しいテーマを誤魔化すように恋愛要素で色を付けるの、往年の映画でやけに目立つ気がしないでもない)。

寧ろ被告人役を演じる若かりし日のデニス・ホッパーのが余程存在感がある。彼がメキシコ人を射殺する冒頭のシーンは掴みが良くて好き。ホッパーは『OK牧場の決斗』とかもそうだけど、往年の西部劇などで度々印象的な脇役として出ているので当時の“新進気鋭の若手”ぶりが伺える。裁判のシーンにおける不敵でふてぶてしい演技からはジェームズ・ディーンやマーロン・ブランドの系譜めいたものも感じてしまう。
シズヲ

シズヲ