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街のあかりのtackyのレビュー・感想・評価

街のあかり(2006年製作の映画)
3.0
カウリスマキ監督の敗者三部作の三作目。
ここにきて、「アレ?」となってしまった。
前二作は、突然のリストラ。不慮の事故。と自分ではどうしようも無い原因が発端で、
そこから次々と災難に見舞われる主人公が、新たな希望を掴むために努力して、やがて希望の未来を見据えるまでを描いた、珠玉の名作だった。

ところが、今回は自分で蒔いた種で、不幸に見舞われるのである。何とかできたはずである。
前二作の主人公が、前に向かって何とか努力をする姿に共感できたが、この主人公は何にでも諦めの気持ちを持ち、人生の流れに身をまかせているだけである。だから、不幸の連鎖にも自業自得と思ってしまう。
観ていて歯がゆい思いだった。「こうすれば良いのに」の連続だった。

前半の時点で本当に主人公を想って、慕ってくれる存在に気づくべきで、最後やっとその人を気づく事ができたのが幸だったけど、「悪」は野放図のままなのが、悔しかった。

映画とは、ささやかな希望を与えてくれるものであって欲しいと、常々思っている。現実の世界と同じ、不条理な浮世を観せられてどうする。

ただ、相変わらずの、あえて映さない技術や、短いシークエンスの積み重ねは素晴らしい。わずか78分の作品には思えない、重厚な人生ドラマであった。

それでも、後味の悪さも入れて、こんな点しか入れられなかった。

「いいんだ。ここでは死ねない。」
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