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街のあかりのkitoのレビュー・感想・評価

街のあかり(2006年製作の映画)
4.0
観ているこちらまでなかなかに凹んでしまう。

連夜で観た「浮き雲」「過去のない男」に関しては「コレって "敗者"って言うほどかなあ⁈ 立ち直った末の爽やかなエンディングやん」という感想だった。なので、本作もきっとそんな風なんだろうなあと思っていたのだけれどーーまあ、最後まで主人公は打たれまくり、ボコられ続ける。

最初から主人公を見る周りの視線がことごとく鋭く刺さる。主人公に向けている体ではあるのだけれど、カメラに向かって真っ正面に睨まれる演出シーンでは否応なく共感性羞恥を強いられる。

この主人公、不器用な男だなあ、でも似た感じの人ってたまにいるなあ、と思う。きっとそれなりに客観視もできているのだろうけれど、良くも悪くも自分の考えに固執して、そんな生き方を変えられないのだろう。観ていてイラつくけれど、同時に少し羨ましく思うところもある。

良く言えば "ハードボイルド" な生き方だと思う。好きなジャンルの私立探偵もののごとく、ボロボロになりながらもきっと最後にはトラブルを解決し、諸々うまくおさめるのだろうなあと期待が高まる、、、

のだけれど、とことん裏目が続きまくり、最後の最後ラストシーンでわずかながら光が差してエンディングとなる。

少し欲求不満が残るけれど同監督の常でシーン、シーン見応えがあり飽きない。レジ係がイルマ役のカティ・オウティネンだったり、刑事役が「過去のない男」と同じで、レストランのオーナー役だった婦人もチラッと出てたりと常連俳優の登場が楽しい。本作ではヘルシンキの街並みが同監督比で一気に現代っぽくなり世紀が替わったのが感じられた。
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