イホウジン

ナイト・オン・ザ・プラネットのイホウジンのレビュー・感想・評価

4.0
西洋社会から逸脱する声の記録

この映画がロサンゼルス~ヘルシンキという、西洋の西端にはじまり東端に終わる構成になっているのは意図的なもののように思える。実質的なオムニバス映画ではあるが、西洋に「中心的」な価値観,人間から逸脱した人々を描いているからだ。貧しい若者,黒人,移民,視覚障害者などなど、彼らの眼差しを通した西洋の都市の姿が描かれる。
そこに映し出されるのは、人間という存在そのものの複雑さや多義性だ。善意とも悪意ともとれる曖昧な感情や仕草、幸福と不幸が同時に訪れるような切なさ、他者とのコミュニケーションの美しさとその不可能性、、様々な対立する概念がこの映画の中では一つの曖昧なものとして描かれる。それが時に物語を破綻させることがあったとしても、オムニバスという構成を通して、観客にその続きを想像させる意欲を駆り立ててくれるのかもしれない。
イホウジン

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