れおん

ナイト・オン・ザ・プラネットのれおんのレビュー・感想・評価

5.0
地球という星にある「夜」という素敵な時間。同じ夜空、5つの都市の異なる標準時間帯の異なるタクシーに乗車する乗客。ロサンゼルス・ニューヨーク・パリ・ローマ・ヘルシンキ。同じ箱でも、その空間にいる「ひと」が違えば、それぞれの空間と物語がある。

傑作。泣いて、笑って、勇気をもらって。5つの物語、5つの教訓。人生が豊かになる生き方をユーモラスに教えてくれる。世界は広く、教育も文化も異なる。しかし人類には普遍の感性なるものがあって、「ひと」の生きる物語に胸を熱くできる。

ジム・ジャームッシュ監督・脚本。会話劇、一つひとつのセリフ・行動とショットがすべて緻密に考えられており、それぞれの物語における「最も大切な言葉」が自然と脳裏にこびりついてくる。コンパクトなのに、奥行きがある。スクリーンに流れている時間以外の人生が、自然と観客が想起できるよう、綿密に濃密に、1秒24コマが作られている。

仕事観や恋愛観、都会の雑踏に紛れてしまう大切にすべきもの、差別や偏見に対する向き合い方、口は災いの元、哀しみとの別れ。「映画」ならではのアプローチで、「人生」を語る。

今もあの花のとなりでウィノナライダーはタバコをくわえている
ライターで燃やして一体何本吸った

なぜ原題は"Night on Earth"なのに、邦題は『ナイト・オン・ザ・プラネット』なのか。その謎が解けないうちに、クリープハイプによる『ナイト・オン・ザ・プラネット』という素晴らしい楽曲と、『ちょっと思い出しただけ』という切なくも熱い映画が誕生した。そして今夜も、家のリビングの壁では、ユマサーマンの隣で、ウィノナライダーはタバコをくわえている。
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