ニャントラ

金正日花/キムジョンギリアのニャントラのネタバレレビュー・内容・結末

3.0

このレビューはネタバレを含みます

脱北者の証言を集めたドキュメンタリー。
独裁政治の場合、指導者によって大幅に暮らしぶりが変わってしまうんだなと思った。まあ日本も首相や与党が変われば多少は変わるだろうけど、生死に関わる度は比べものにならない。反面、金日成時代はそんなに厳しい暮らしではなかったことに驚いた。創業者の代はうまくいくけど代替わり毎に徐々に劣悪な環境になっていく様は世襲経営の中小企業のようだなと思った。公開から12年近く経ち代替わりもしたが、現状はどうなのだろう。

人間は生まれてくる場所を選べない。たとえ無事逃げ仰せても、強制送還の恐怖や残してきた家族への心配、失った家族への罪の意識で、結局心からの安寧を手に入れることはできない。今は安全でも、その過程で失ったものや負った傷があまりに多すぎると感じる。
最近、ウクライナの紛争や石川の災害などで、「なぜ彼らは酷い目に遭って自分は何事もなく暮らせているのか」と考えることが多いけど、結局運でしかない。どんな境遇に生まれるかも運でしかない。自分もいつどうなるかわからないし、神などいないと言いたくなるくらい、そこには慈悲も何もない。人1人の人生に起きるドラマや感情の壮大さがバカみたいに感じるくらい、人はあっさりと死ぬ。たぶん、人間が真に平等に暮らすには、大天災や核戦争が起きて、人間が絶滅寸前レベルまで減ってからじゃないと不可能だろう。そして数が増えればまた権力構造や争いが生まれる。全人類の脳を焼き切って「得をしたい」という感情が働かなくなるようにしないと、いつまでも不幸は続くのだろうなと思った。
何事もなく暮らせている今この瞬間を大事に、当たり前に明日があると思わず生き切ろうと思った。そして北朝鮮の人々に1日も早く安寧な日々が訪れますように。
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