カルト映画。
世の中にカルト映画は星の数ほどあれど、これほどその言葉が似合う映画も他にあるまい。
ホラーを核に据えながら、実験的な映像技法が目まぐるしく展開する。オーバーラップ、はめ込み合成、早送り/巻き戻し、書割の背景……などなど遊び心というよりは悪ふざけを感じる映像が満載である。
巷にあふれるMAD動画を先取りしていたといえば褒めてるのかけなしているのかわからなくなるが、少なくとも私は褒めているつもりだ。
実験的というと、内容が空疎であるかのように思われるきらいがあるが、そんなことはない。
スラッシャー、カニバリズム、モンスター、スプラッタといったホラー要素ごった煮。にも関わらず悲壮感なんてものとは無縁で、不思議なテンションを醸し出している。
ストーリーは、閉鎖空間に閉じ込められてなにか恐ろしいものに襲われるというホラーの黄金パターンをなぞっており、実にわかりやすい。
ましてやその主人公が少女であるなら、「サスペリア」「フェノミナ」「悪魔のいけにえ」など類型を見出すのは非常に容易だ。
テーマには青春の心地よさ、少女のエロチシズム、情念、戦争の残滓、そして百合――様々な要素が見え隠れする。
萌え系の作品を先取りしたような描写もある。夢見がち、お嬢様、大食い、格闘好き……などなどの極端なキャラ付けは非常に萌え的である。
この映画はカオスである。カオスのなかには宝物が埋まっている。真面目な性格のひとは難を示すかもしれないが、遊び心を大切にする人はきっと気に入ると思う。