ゴト

白く渇いた季節のゴトのレビュー・感想・評価

白く渇いた季節(1989年製作の映画)
3.9
誰だって平穏無事に暮らしたい。良心はあっても臭いものに蓋をすることで、それが叶うならそうするのが普通だろうし、責められることじゃない。でも、それが出来ない人間も少なからずいる。

一介の教員が、家族を危険に晒してまで、巨大な力に立ち向かおうとするのは普通のこととは言えないかもしれない。しかし、今の自分の立場や置かれた状況を一切抜きにして、一人の人間として考え、行動出来るというのは本当に誇るべきことだと思う。残念なのは、従順ならざる羊は簡単に群れから追い出されてしまうということ。仕方のないことかもしれないけどね。

アパルトヘイトの只中にある南アフリカを舞台にしているので、白人と黒人の対立というよりかは、黒人は完全に被害者、虐げられる存在として描かれている。それを助ける存在が主人公を含めた三人の白人という構図。これもまあ、ひねくれた見方をすれば黒人を弱者として描いている時点で少し差別的な気もするけど、欧米社会にアパルトヘイトについて問うことを考えれば、この方が伝わりやすいのもあるのだろう。

主人公は元々有名なラガーマンという設定だったのかな、サイン書いてたし。おまけに職業は教師。正に模範となるべき人物。そんな人物が政府に反旗を翻すのだから、余計に重みを感じる。それにしても、出演者の豪華なこと。あんな人を食ったような役を演じるマーロン・ブランド初めて見たかも。

社会派映画としては正にお手本のような内容。裏返せばありきたりな展開なんだけど、それでも見入ってしまうのが社会派映画の良さと凄さ。
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