TaiRa

ウェンディ&ルーシーのTaiRaのレビュー・感想・評価

ウェンディ&ルーシー(2008年製作の映画)
5.0
ライカートの描く人たちは中々目的を達成出来ない。何かしたくても出来ない、何処かへ行きたくても行けない。

冒頭の犬と散歩する横移動が何だか最高。左から右への動き。『オールド・ジョイ』にも登場したライカートの愛犬ルーシーが今回も登場。ルーシーの愛嬌が遺憾なく発揮されている。ボロい車(ホンダ アコード)でアラスカを目指す女一人、犬一匹。車がぶっ壊れ田舎町で立ち往生。ここには心温まる善意があんまりない。全くではないけど、あんまりない。スーパーで万引きしたウェンディをネオリベ系バイトくんが警察に突き出し、しょっぴかれた時に置き去りにしちゃった犬を警察はほっとくし(ここで『リバー・オブ・グラス』の動物を引き取っちゃう刑事思い出した)、妹夫婦に電話しても素っ気ない、車の修理屋はどう見ても金が無いウェンディに当たり前のように修理代を提示する。「修理代と別にレッカー代50ドルね」「すぐそこにあるんだけど」「やっぱ30ドルでいいよ」みんな普通に対応してるだけで悪人じゃないが、特別優しさを示してくれる訳でもない。駐車場警備のおじちゃんは唯一心配してくれる存在だけど、彼自体そんなに恵まれた境遇の人でもない。彼の存在は救いだけど。車も失ったので野宿してみるが、人の住む世界の外側には、やはりそれなりの「人間」が生息している。前作で見られたルーシーの「棒が好き」特性を活かした演出が泣ける。ライカート自身が演出しながら泣いてると思う。エンディングで列車から見える景色を横移動で映す。右から左への動き。
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