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ウェンディ&ルーシーの42のレビュー・感想・評価

ウェンディ&ルーシー(2008年製作の映画)
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一瞬「なんて自分勝手なんだ!」って考えが過ったけど、それは私が恵まれているからで、頼りにできる家族がいて、旅をした経験がなくて、愛犬がお腹を空かせていると分かっているのに食べ物を買ってあげられないという経験をしたことがないからかもしれない。彼女のことを自分勝手だと言うことなんてできない。

散々な日常生活に嫌気がさして旅をして、良い出会いや別れを繰り返しながら成長していくロードムービーがあるけど、ケリーライカートはぼんやりとした希望すら見せない。微かな希望を自分で想像して見出すことしかできない。

問題が一つではない上に、これからも増え続けていきそうで、私がウェンディだったら発狂しそう。観ていてとても不安になった。
人生は素晴らしい、なんてねぇ……
まず女性が旅をすることがめちゃめちゃ大変だ。身体のこともあるし女性だと見下してくる人もいる。男の人だとのらりくらりとかわせたかもしれないが女性だとそうはいかない。そういうことも関係してくる。
アニエスヴァルダの『冬の旅』を思い出す。自分を壊してしまうのか。

ただでさえ短い犬の命
ウェンディが帰ってきた時ルーシーはちゃんとあの家にいてくれるの?もしかしたらあれが最後かもしれない。そう思うとどんどんやるせなくなっていく。だけどこういう終わり方でよかったと思っている自分もいる。私の物語のような気がした。私が旅をしてもこうなる気がする。

ウェンディの鼻歌。いつでも考えていたんだよなウェンディはちゃんと。少しだけ前を向くとき彼女の鼻歌。とても大切なことのような気がする。不安が常にあっても少しだけ前を向ければ十分なのかもしれない。ラストシーンを観ているときすごく不安な気持ちになったのに振り返りながらいろいろ考えていると少しだけ前を向いているような気がする。不思議。
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