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パリ、テキサスのhoshのレビュー・感想・評価

パリ、テキサス(1984年製作の映画)
4.2
砂漠で放浪していた男トラヴィス。彼は息子と再開しやがて元妻に出会うために旅に出る。

言葉で説明するのが野暮。それくらい映像と撮影が美しい。車からゆったりと捉えられるテキサスの街並み、赤と緑の電飾の配色。至福。

8mmフィルムを眺める場面の豊かさと切なさはたまらなくて、「こういう感情になるために映画を観てるんだ」と強く思わされた。一生モノ。映画とは映像とは、はるか昔の営みや記憶を永遠に記録できる美しく尊い媒体なんだと再認識した。現に制作されて40年近く経った今、この作品を初めて観て感動してる自分がいるわけで。とてもロマンを感じる。

他にも鏡越しでも面と向かって話せない(つまり2人の関係は終わっていて戻ることはない)、見る/見られるの逆転、といった映画的構図を活かした終盤のやり取りも凄すぎて見入った。最初はカットで割っていた人物同士が同じ画角に写るようになっていく。そんな心理的距離の変化を活かした下校のシーンもたまらんね。

ただどうしても結末には納得できない。結局はトラヴィスの独りよがりな男性性による話じゃん、と思った。弟夫婦の愛の方が良く見えたし、奥さんの事情は…という。子供があの後幸せになれるともとても思えなかったし。血縁か時間か…。一言じゃ片付けられない人間のエゴを描き出していたとは思うし、時代の違いや、今の自分の年齢もある気がするからむずかしい。

演技、演出、撮影、音楽。ありとあらゆる要素が素晴らしく「映画」としての質は極上なので、146分はあっという間。今後美しい映画は?と聞かれたら真っ先にこの作品を思い浮かべるはず。モヤる終盤込みで間違いなく観て良かった。
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