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パリ、テキサスのtakaoriのレビュー・感想・評価

パリ、テキサス(1984年製作の映画)
3.9
2024年107本目
劇場40本目
「午前10時の映画祭」にて

昨年末の『PERFECT DAYS』が大傑作だったヴィム・ヴェンダースによるロードムービー。登場人物はほぼ5人のみで、家族の絆を描く映画である。息子ハンター役の男の子がとても可愛く、また元妻のジェーン役の女優が美しいのが見ていて楽しい。
映画の大半は家の中か、車の中での会話を描くシーンであり、とりわけこの車中のドラマがヴェンダースの得意技である。『PERFECT DAYS』でも役所広司演じる平山が軽自動車に乗って移動する場面が印象的だが、今作『パリ・テキサス』でも兄弟や父子の絆の回復がドライブする車中での会話の中で少しずつなされていく。濱口竜介はヴェンダースに強い影響を受けており、アカデミー賞受賞の『ドライブ・マイ・カー』はまさにこのヴェンダースの作風を受け継いだ映画である。
傷つき、自分を失っていたトラビスが息子や別れた元妻との絆を取り戻していく姿は確かに感動的だが、一方で身勝手なトラビスに代わってハンターを息子のように育てていた真っ当な弟夫婦が最後まで置き去りにされたまま終わってしまうのはモヤモヤする。「息子は母親と暮らすのがいい」と決心するトラビスが、ハンターにとって一番大切な存在になっているはずのウォルトとアンヌのことを最後まで考えないまま終わってしまうのは残念だ。
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