tomひで

パリ、テキサスのtomひでのレビュー・感想・評価

パリ、テキサス(1984年製作の映画)
4.0
午前十時の映画祭でヴェンダースの「パリ、テキサス」が観られるというので劇場へ。「パリ、テキサス」を観るのは87年以来で今回2回目。今回の上映マスターは2012年に35㎜フィルムから4Kスキャンされたリマスター版らしいが午前十時の映画祭では2K上映だった。2K上映だったがリマスタリングが素晴らしいのか、とても綺麗に感じた。

====以下ネタバレあり====

久しぶりに観直したがやっぱり大好きな映画だった。ヴェンダース作品は5本しか観てないが一番好きだな。人生に絶望した主人公がまた生きてみようとする話。オープニングの空撮からテキサス荒野の画づくり、テキサスの空、ライクーダーのギター、いいなぁ(笑)

喋らない主人公が少しずつ話し始め、少しずつ人と繋がっていき、息子と繋がり、父になろうとし、母を取り戻そうとする…。

この映画の画作り、空間のとり方、ショットの間合い、そのリズム感が本当に気持ち良すぎる。画面半分に運転している主人公、画面半分が車窓の風景、これをいちいちパンフォーカスにしてるのとか(実際は二画面合成だが)何気ない画にめちゃくちゃ拘っている。画面の配色もそう、意識してみると更に面白く観られる。

そして映画後半のマジックミラー越しの夫婦の会話シーンは本当に凄いな。映画史に残る名シーン。マジックミラー越しにした画作り、ミラーの隔たり、実際の距離感と精神的距離感、複合的に感じられるその仕掛けが巧すぎる。

ラストのホテルでの再会、無言で抱き合う母と息子のシーン、背後のビル夜景の画づくりとかもいちいち良いんだよな〜。この映画だけでヴェンダースは好き。ナスターシャキンスキーも美しかった。
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