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パリ、テキサスのmoのレビュー・感想・評価

パリ、テキサス(1984年製作の映画)
5.0

『愛に溺れる。』


4年間の失踪から帰ってきた父と息子が母を探すロードムービー。流れてくるスライドギターの音も、砂漠のようにザラついた映像も、途中で流れてくるどこまでも破壊力ある8㎜ムービーのシーンも、「パリ、テキサス」って題名も…全部全部全部、素晴らしいの一言。



兄弟愛、親子愛、夫婦愛…色んな愛が詰まった作品ですが、ここまで痛烈な愛を描いた作品も他にない。前半、弟との思い出話や息子との帰り道に愛の温かさを感じさせつつ、後半は愛に溺れる危うさや心の脆さを痛いくらい突きつけてくる。


人間関係、特に男女の関係に”やり直し”は難しい。
美化された過去に戻りたいと願ったところで、一度生まれた亀裂と現実を抱えた再スタートは余りにも代償が大きいように思う。過去は過去。もう手に入らない一瞬として美しいままであり続けてほしい気持ちもわかる。

そして何より最後の余韻が最高。ここの余韻で、8㎜ムービーの映像がより鮮明に甦るのがにくい。劇中で唯一3人揃って笑うあのシーン…きっとあの光景こそ、トラヴィスが夢見たパリ,テキサスそのもの。もはやトラヴィスの頭の中にしか存在し得ない安寧の地、「パリ,テキサス」…愛してるから、旅立つのだ。


ああ〜〜〜〜好きです、この作品。
お勧めしてくれて本当にありがとう。
こういう作品との出会いは大切にしたい。
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