チッコーネ

悪の愉しさのチッコーネのレビュー・感想・評価

悪の愉しさ(1954年製作の映画)
3.7
骨太なサスペンスで、線が細くニヒリスティックな主人公にはアンチヒーローの趣も。
千葉泰樹の作品を観るのは初めてなのだが、戦前から活躍するベテランらしい…、まだまだ知らない、すごい監督がいるものだと唸った。
本作は彼が東宝在籍時に借り受けられたのか、東京東映の映画となっている。
登場人物たちの醒め切った、或いは乱れた人間関係の描写は戯画的でありながら、驚くほど直裁。
夜の酒場に蠢く女たちの描写には、溝口作品並みのリアリティがあった。
また1シーンをさまざまな角度から押さえる撮影が意欲的なほか、編集にも工夫あり、さらにホラー映画のような演出/画面加工までが顔を出す。
ラストの投身自殺死体の生々しい撮影に至っては、公開当時かなりショッキングだったのではないだろうか。
中盤で絞殺される森雅之ほか、汚れ役に挑む久我美子、杉葉子など、俳優陣も豪華で見応えたっぷり。