はるちゃん

マイセン幻影のはるちゃんのネタバレレビュー・内容・結末

マイセン幻影(1992年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

ウッツ男爵は、まるで「家族の肖像」の教授のよう。実像の人間には興味がなく、彼の中に生きるのはマイセンの人形。逆に、マイセンの人形に命を与えることができるのは男爵だけ。劇中、人形にイタリア喜劇を演じさせ悦に入る様子は、まさにマイセンの陶器人形「ウッツ」として作品化されているとのことです。

マルタとの劇的な出会い、結婚の経緯、その後の2人の微妙な関係性も何故かおとぎ話のようで不思議な魅力があります。愛してもいないのにマイセンのコレクションを飾る部屋欲しさに結婚してしまうのは、どうなんですかね、、、衝撃ですね。

ルートヴィヒ2世も、自分の死後はノイシュヴァンシュタイン城を爆破して欲しいと伝えていたそうですが、ウッツ男爵と通ずるのではないでしょうか。

VHSの画質が残念で、素敵なマイセンの磁器がよく見えませんでした。いつかどうにかして高画質で観なおしてみたいです。

2023.4.28 LDで鑑賞。VHSよりは若干画質がいいかも?

メモ
彼のはけ口は2つ。磁器と女だ。手に入りそうもない女。ウッツ男爵の友人の学者先生曰く。

ヨハン・ヨアヒム・ケンドラー(1706-1775)マイセン初期の偉大な造形家。

アガサ・クリスティーの大伯母マーガレットさんの家、大広間にはドレスデンの人形が飾ってあったとのこと。どれもイタリア喜劇、コメディア・デッラルテの登場人物で、アルレッキーノ、コロンビーナ、プルチネッラなどで、これらが後に多くの変遷を辿って『そして誰もいなくなった』の被害者たちのモデルになったそうです。(アガサ・クリスティーの晩餐会より)

コメディア・デッラルテは16〜18世紀に流行した即興喜劇で、ストックキャラクターとストックシチュエーションの手法を用いる。数多くのオペラ・ブッファの原作にもなったとのこと。男爵は、ドヴォルザークのオペラ「ルザルカ」に合わせて人形劇を披露する。

ちなみに、入れ上げたソプラノ歌手とのダンスシーンは、リヒャルト・シュトラウスのオペラ「ナクソス島のアリアドネ」から。

原作者ブルース・チャトウィンはイギリスの小説家。ヴェルナー・ヘルツォーク監督作品「コブラヴェルデ」の原作者でもある。