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必死剣 鳥刺しのIDEAコメント休止中のレビュー・感想・評価

必死剣 鳥刺し(2010年製作の映画)
3.7
『カンピロバクターは怖い』

時は江戸。
閑古鳥が鳴く店の起死回生の一手が
「鳥刺し、はじめました。」
評判が評判を呼んでいたある日、奉行所の役人が次々と謎の病に倒れる。彼らに共通するのは話題の鳥刺しを口にした、ということ。

事態の真相を暴くため、のんべえ侍が必死の捜査に打って出る!
謎が増殖する大江戸ミステリサスペンス!

---------ここまで嘘予告---------


日本の原風景といえるような美しい遠景は心が安らぎ、しっかりと固められた時代描写はストーリーに説得力を持たせる。
中盤までは派手な描写もなく淡々と進むが、ラスト20分の激動を思えば嵐の前の静けさであったとも感じる。
これは、一人の侍の生きざまの物語である。

正統派の時代劇の趣きで大いに見応えはあるが、時代劇を普段観ない層に訴求するには絵面が大人しすぎるか?
主演が同じく豊川悦司なので引き合いに出すが、絶賛公開中の『仕掛人 藤枝梅安』のキャッチコピー"時代劇、新時代。"は確かにその通りで、ありゃあ格段に観やすい時代劇だったのだと実感。
しかし今作のようなトラディショナルスタイルの時代劇も、ふと観たくなる良いものだ。

豊川悦司演じる兼見三左エ門の誠実で高潔な生き方、そこに確かにある人間味。
そしてその先にある武士としての覚悟を、ぜひ見届けて頂きたい。
タイトルの"鳥刺し"の意味が分かった時、心を刀で斬られたような感覚に陥る…かもしれない。