エイガスキー

必死剣 鳥刺しのエイガスキーのレビュー・感想・評価

必死剣 鳥刺し(2010年製作の映画)
3.0
「秘剣 鳥刺し」という、使い手本人しか会得していない「必死」の技を持つ剣術の達人である侍・兼見の物語。
側室の妾に入れ上げ、妾のメチャクチャな要望を藩政に取り入れたバカ殿のせいで苦しむ民のため、また、病により妻を失い死に場所を求めていた自分のために斬首覚悟でその妾を殺めるところから話が始まる。

結果なぜか1年の監禁刑?と降格という軽い処分になり、その1年の描写とともに兼見の人となりを、時間を遡ったり現時点に戻ってきたりして表しており、なかなか見づらい。
ただ季節の移り変わりの描写が美しく、夏だの秋だのと説明せず、日差しが強くなったり、夕立がきたりしての描写が良かった。

ラストの殺陣はかっこいいというより悲壮感が絶大で見ていて息が詰まった。

ザ・時代劇といった内容で、所作など見ていて気持ちがよく、たまに見たくなる類の映画だった。

最近はこういったガチの時代劇が減って寂しいと思っていた。
高齢化社会で需要がないわけじゃないよなあと訝しんでいたが、この映画を見てなんとなくわかった。
昔の封建社会では今と比較にならないくらい男尊女卑が激しく、多分時代背景に忠実に作るとうるさい連中の的にされるからだろうなあと思った。
今こういう題材を扱う場合、例えば黒人差別を扱う場合はただ時代背景を忠実に再現するだけでなく、「差別はダメな事なんだ」という大義名分を掲げないといけない。
本来なら「表現の自由」という観点からそんなのは必要ないのだが、多分お金の問題とかでそうせざるを得ないんだろう。
この映画も「バレる」と面倒なことになりそうな内容を含んでいて、よく作ったなあと感心する一方で、そういうことを考えてしまうようになった自分に鬱々とした。