三隅炎雄

鉄火場の風の三隅炎雄のレビュー・感想・評価

鉄火場の風(1960年製作の映画)
3.8
監督牛原陽一、脚本熊井啓による日活ノワールの佳作。無実の罪で服役した石原裕次郎が、自分を陥れた芦田伸介を追い詰めていく。
かなり大きく時間を割いたリアリスティックな賭場シーケンスと、キューブリック『現金に体を張れ』をお手本にしたと思しき野球場でのスリリングな現金強奪シーケンスが素晴らしい。米軍基地脇での銃撃戦はアメリカの渋い犯罪映画を見ているようだ。
芦田が組織内で立場が危うくなって強奪計画に手を付ける経緯が丁寧に描かれているのも面白い。日活アクションが敵対する悪党を通して、組織の中で生きる人間の在り様、組織内部の政治力学にあがく人間の姿を描いているのは珍しい。これは熊井啓の功績だろう。賭場の場面もそうだ。そこではよりいっそう政治が生々しく描かれている。
裕次郎はまだまだ細くギラギラしていて、立っているだけでアウトローに見える。
三隅炎雄

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