垂直落下式サミング

極道めしの垂直落下式サミングのレビュー・感想・評価

極道めし(2011年製作の映画)
3.5
一巻と二巻だけ異常に面白いグルメ漫画『極道めし』を『ブタがいた教室』の前田哲監督が実写化した道徳食育映画。実写化にあたり正月のエピソードを抽出し、各キャラクターの役回りも大きく変更され、作品の個性を残しつつもハートウォーミングな内容となっている。
刑務所のなかでは三食の食事だけが楽しみ。受刑者たちは正月になると特別に出されるおせち料理の話で盛り上がる。そこで同じ部屋に収監された囚人たちによる、おせち料理争奪戦が開催されることになった。各々が自分が今までに食った一番ウマイ食事の話をし、最も多くの人にゴクンと唾を飲み込ませた者が、一番旨そうなめしの話をした者として、正月のおせち料理の中から欲しいものを一品選んで全員からいただくことが出来るというグルメトークバトルが展開するのだ。
受刑者の経験談だけに、せつないエピソードだったり、酷い話だったりと過程を見てしまうと胸がいっぱいで、食欲の方はぶっちゃけ湧きづらい。
受刑者たちの飯トークに共通するのは、料理の美味さではなく、その飯をどんな気持ちで食べたかということを話していること。美味い飯とは何なのか。あなたが食べている食事は本当に美味しいのか。そんなことを感じさせ、食事とは生物の生理に直結した生きるための行為であり、欠くことのできない人生の一部なのだと思い起こさせてくれる。