あなぐらむ

戦場のなでしこのあなぐらむのレビュー・感想・評価

戦場のなでしこ(1959年製作の映画)
3.1
大戦後、大陸で活動する赤十字看護婦が慰安婦にされてしまうという、今ここに来て見るべき映画となった、戦後の戦勝国現地支配問題のカリカチュア。
当事国がロシア、中国である事の"特殊性"も加味されて、俄かに現実味を帯びる物語である事が再認できる。

大蔵貢らしい皇軍もの(川内康範が脚本なのでなおさら)と性猟奇ものをミックスした内容ではあるが、石井輝男は恐らく猛烈な勢いで仕上げたのだろう、セットも少なくロケ地も大陸に見立てたお馴染みの富士の裾野だけという急あつらえに見える一本ではある(明らかに繋がっていない画で繋げてある所もある。画が足りなくてそこだけ再撮したのか?)。
本来の監督のテンポ良い作風とは違っている事から、大部分は助監督の下山堯二の手によるものかもしれない。

キャストは婦長に新東宝の華・小畑絹子、看護婦たちに三ツ矢歌子(処女を守られ生還)、大空真弓(最後で死にます)、原知佐子(田原名義。脱走シーンは面白いが結局死にます)、星輝美(すぐ死にます)と新東宝スターレットがナースやチャイナ服を披露してくれるので、お披露目興行的な面白みはあるものの、宇津井健がもう少し活躍してくれないとやはり話として難しい部分はある。お前何しに出て来たん。

興味深いのは本作のロシア軍では女性兵士も混ざってこの事件に関与(というか、日本語通訳で歌って飲んだくれてるだけだが)している点。「戦争は女の顔をしていない」を知っているとちょっと恐ろしさ倍増である。

まさになでしこのような白衣で死んでいく看護婦たちの最後にさす紅を、残り少ないものを分け合って使うというクライマックスの展開が開巻すぐの伏線を活かしており、涙を誘う。
戦争と女性の映画なんだから、ここは小森白が監督すべき所だったろう。「女の防波堤」もやってるんだし。