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第三の男のuriのレビュー・感想・評価

第三の男(1949年製作の映画)
3.8

— “He never grew up. The world grew up around him, that's all.”

— “In Italy, for 30 years under the Borgias, they had warfare, terror, murder and bloodshed, but they produced Michelangelo, Leonardo da Vinci and the Renaissance. In Switzerland they had brotherly love. They had 500 years of democracy and peace, and what did that produce? The cuckoo clock.”

1つ目の引用は話の展開に全く関係ないが無いけれど、好きな表現だったので。



この手の映画はネタバレあらすじを一通り読んでからの方が楽しめる。

劇中に音楽が素敵と思ったら”ツィター”というオーストリア伝統的な弦楽器を使って演奏されていたのね。

刑事でもないただの一般人のHollyが事故死とされた友人の謎を突き止めちゃうのすごいよね。劇作家としてストーリーを書く彼の推理力の表れかしら。


Hollyがアメリカに戻るため別れを告げに来たとAnnaの部屋を訪ねるシーン。Hollyに触られて外に逃げたAnnaの猫が夜の暗い路地を歩き、男の足にすり寄る。この時点で膝から上は映っていないが、猫が懐いているという点からこの男がAnnaの愛人で彼女の猫にも何度か会っていると思われる、死んだはずのHarryであることが推測できる。この描き方にグッときた。

それから一番最後、Harryの葬式の後に葉の枯れた冬の並木道を、視聴者の方へAnnaが歩いて来るシーンも好き。手前左に立つHollyにはちらりと目を向けることももせず、真っ直ぐ歩くAnna。そんなAnnaに苛立ちを覚えるHollyはタバコに火をつけたあとにそのマッチをえいっと地面へ投げつける。
この1分18秒に台詞はひとつもない。だけど幕切れの彼らの感情が強すぎるくらいぎゅっと詰まったファイナルカット。

語らない・見せないの”美”が多く詰まった作品だったな。



余談だが、このくらいの時代の欧米の作品を見るといつも思う、登場人物の顔が見分けられない問題がここでも。声質や話し方もみんな似ているから余計に分からない。
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