せーや

第三の男のせーやのレビュー・感想・評価

第三の男(1949年製作の映画)
3.8
予想以上にオーソン・ウェルズの登場シーンが少ない。

売れない作家ホリー・マーティンスは
親友ハリー・ライムを頼ってハンガリーへ。
しかし到着してすぐ、ライムが死んだことを知る。

おそらく知らない人はいないであろう
あの名曲とともに始まる映画「第三の男」。

交通事故で死んだハリー・ライムは
事故直後、二人の男に看取られたという。
しかし事故の目撃者であるアパートの管理人は
「そこには三人いた」という。
マーティンスは謎の「第三の男」を探すべく独自に調査を始める。

ミステリーであり社会派サスペンスであり
そして恋愛ドラマである今作。

ハリー・ライムは何者に殺されたのか?
現場にいた第三の男とはだれか?

という二つの謎を追いながらライムの恋人アンナや
終戦後、分割統治されたハンガリーの政情を交えながら
物語はあらぬ方向へ進んでいく。

まず、気になるのが何といっても画面演出でしょう。
俯瞰からとらえた映像、そして斜めの画面。
かの淀川長治先生は「映画すぎる」と言っています。
「あまりにも素晴らしすぎて嫌いだった」と。

あまりにもクサい演出が多くて
現代の映画を見慣れている人には
なんだかウザったく感じてしまいがちですが
慣れてくるにつれ、その美しさがわかってきます。

ハリー・ライムという男の真実にも焦点が当てられていく。
彼の本当の姿はマーティンスの知るものとは違っていた。

「もしも友人の本当の姿を知ったら?」

何十年も仲良くやって来た友達が
実は闇を持っていたら、あなたはどうしますか?
そのまま、友達でいられるだろうか。
それとも、幻滅して絶交するだろうか。

「友情」か、「善」か?

マーティンスにとってのライム
アンナにとってのライム
同じようで、実は違う。

そして一度失った友情は、戻ることはない。

ラストはとても美しくて、悲しかった。
せーや

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