Ricola

アンナのRicolaのレビュー・感想・評価

アンナ(1951年製作の映画)
3.7
まるで聖母マリアのような穏やかな微笑みを浮かべて、どんな患者にも臆せず堂々と、かつ献身的に接するアンナ。
しかし実は彼女は、暗い過去を抱え傷を負っているのだ。
だからこそ彼女は、勤務する病院を「ここがわたしの世界」だと腹をくくっているようだ。
そんなアンナは修道院長から人間愛が強すぎると言われてしまう。
実際にそうだからこそ彼女はこの場所にたどり着いたのだろうし、さらなる受難を経験することになるのだ。


運び込まれたある患者に動揺しつつも、彼の回復を祈るようにアンナは窓際で外を見つめる。医療機器の蒸気の噴き出す音が鳴り響くなか、彼女の目が見開き暗闇に呑まれて暗転し、回想へと入る。

彼女の顔に暗闇が侵食していって暗転するという展開が見られるのはこの一度だけではない。
ただいずれにおいても、病院から彼女の働いていたナイトクラブへと回顧されるという流れは同じである。

暗闇が人物の周囲をぼやかす一方で、彼らの存在や表情を浮き彫りにする演出は、回想シーンの暗転の演出の暗闇に呑み込まれることとは相反するものだろう。

「誘惑を断ち悪から我を救い給え」
アンナはこう祈ることで、自分の過ちに向き合う。
アンナの罪の意識は出来事そのものというより、自分の出自や経歴、そして断りきれない性格からか来ているようだ。
それが自分だけではなくアンドレアを悪へと引きずり込んだと、アンナは思っているため罪を背負っていると感じているのだろう。
実際にアンナの性格は真面目で責任感が強く、思いやりのある人物なのだ。
だからこそ必要以上に自分を責立てており、この姿勢が自分の首を絞めることになっている。

『にがい米』で奔放で自滅へと向かう女性を演じていたシルヴァーナ・マンガーノだったが、この『アンナ』では自分自身に過剰に課してしまった十字架に苦しむ真面目な女性を演じていた。
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