半兵衛

サンタ・ビットリアの秘密の半兵衛のレビュー・感想・評価

サンタ・ビットリアの秘密(1969年製作の映画)
4.7
ムッソリーニ政権崩壊を聞いた村人たちがなぜか興奮状態に陥り、たまたま目にした人の尻を村人総出で蹴りまくるという爆笑のオープニングで心掴まれたあとは一気呵成に最後まで見てしまった。

ムッソリーニが捕まり、ナチスが親ドイツ派と手を組み侵入してきたイタリアの片田舎を舞台にしたいわゆるナチスもの。ただこの映画のユニークなところはナチスの目的が村の名産であるワインを大量に入手することで、生活の糧でもあり村の名物でもあるワインを奪われたくない村人たちは総出で確実にばれないところにワインを大量に隠し、ちょっとした量をナチスに渡して誤魔化そうとするが…というのが本筋。目的が目的だけにナチスもそれほど殺伐としておらず、ごまかす村人たちとのやりとりもほのぼのとしたコメディタッチ。それでも敵も馬鹿ではなく途中からワインの生産に関する資料を読んだ人間があまりにも生産数と実在する数に違いがありすぎることに気づき、ワインがどこにあるか探すナチスとそれを阻止しようとする村人たちのやりとりに息を飲む。

見た目はゴツいが、飲んべえで気が弱く優しくて愛嬌だけが取り柄の『道化師』というアダ名を持つ主人公をアンソニー・クインが熱演。別居している奥さんや娘にも能力のなさをバカにされ、それでも村の臨時代表として仲間と協力しながらナチスからワインを守ろうとする彼の姿に笑いつつも目頭が熱くなってくる。ラスト、怒ったナチスの将校に銃を突きつけられても笑いながらごまかす彼の姿はまさに痛快。主人公に対し冷たい鬼のような奥さんも印象的で、凄い亭主に対し暴言を吐きまくって見てるこっちもビビるけれど最後には亭主をどれだけ心配していたかを泣きじゃくりながら語るのでほっこりとする。

個性的な村人たちのキャラクターも良いが、敵対するはずのナチスも率いる将校をはじめみな典型的な悪人ではなく、人間臭い奴らばかりなところも○。

あと村人総出でワインを隠すときのバケツリレーの迫力は必見。そして微笑みがとまらない多幸感に満ちたエンディングも最高。
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