トロピカル・マラディの作品情報・感想・評価

『トロピカル・マラディ』に投稿された感想・評価

劇映画のつもりで無意識にストーリーの筋を探してしまったのだがもう一度見る機会があるのならそうはしないだろう。
この物語のメインは前編のラブストーリー(?)のように捉える方が映画としては自然な解釈なのかもしれないけど、現代アート的な作品としてこの映画を観た場合後編をメインとして捉える方が前者の捉え方よりも二編で一つの作品としてはまとまりが良い気がする。後編をファンタジーではなくリアルだとしたうえで敢えて前編を夢物語、白昼夢的な?としてみるとしっくりきた。リアルそうなラブストーリーである一方でBGMがプツリと切れたり人物が去った後のカットが長かったり、ドラマ的なストーリーを表現するためのカットよりも直接的な意味を持たないカットが多いこ前編の映像はまるで夢のように感覚的でパラパラと解けてしまいそうだけど緩く繋がっているストーリーみたいだった。
後編は正直謎すぎるから前編に肉付けしてもらう上記の観方が私流。後編だけで観たらインスタレーションだと思って観たらなんかすごそうだなっていうぼんやりとした感じだー。
shinichiro

shinichiroの感想・評価

5.0
◎ 日本人である私たちにとってはやはり中島敦の’山月記’の引用という点がかなり気になるところでした。英語字幕で追っていたので正確な内容はあまり自信がないですが、今日まで通じる監督の作風の一貫性をこれでもかと感じました。ex; 二部構成、過去まで遡れるおじいさん、エアロビ、ポップソング、おばあさんとの洞窟探検、金銀を手に入れたがさらに求めたら何も無くなってしまったというエピソード、森へ迷い込んだような気持ちになる音響や画面の暗さ,,などなど
前半の妹だと思ってというおばさんの舞台上のリサイタルや男根の木造彫刻を手に入れたら商売繁盛したという女性の話が自分にはなんだか引っかかりました。後半はどんな生物にも変異できる魂?の話をサイレント映画のテロップを交えながら進んでいく不思議な話やお猿さんと虎になったボーイフレンドとの交流ことでついていくのがやっとでした。
ボーイズラブな話ですが、’君の名前で僕を呼んで’のような清々しさを感じました。監督自身もこの作品で自分の指向を公表したとか。

◉ The Clash - Pressure Drop (from ' Super Black Market Clash')
https://youtu.be/ZjP8sbdQaq8
NirvanaやBob Marley のTシャツも目に残りましたが、雨の中、古屋の下で二人の間でThe Clashのテープが交わされたのが監督の趣味なのかグッときました。
何のアルバムのテープかは判別がつかなかったですが、僕はこのB面集を結構推しています。

5.22 追記 2022.3月号 ユリイカより
クラッシュはあのロンドンパンクのバンドではなく、タイのクラッシュとのことでした。
OZ

OZの感想・評価

4.5
友人に借りて観た。前半が終わるところの、あの音楽がクセになって、たまに聴きたくなる。英語字幕しかなくて頭が痛くなった記憶。
引き裂かれる身体について 牛(あえて牡牛と書きたい)の白い霊
べん

べんの感想・評価

4.0
イメージ・フォーラムにて。まんま山月記となる後半の転調に驚いた記憶。
Shaw

Shawの感想・評価

4.5
キム・ギドクの『うつせみ』を借りたと思ったら家についてから本作と取り違えがあったことに気づいた。

ということで『メモリア』公開中のウィーラセタクン監督作品初鑑賞したのだけれど、これがまあタルコフスキーとも似て非なる何とも言えない神秘性を持つ作品で、思いがけない素晴らしい出会いとなった。

二部構成で、ビビッドな恋愛模様を映し出す前半から不気味なムードを含んだ神秘的なファンタジーへと様変わり。二つの関連性も意図も全く掴めてないが、とりあえず映像は頭に焼きついた。
思い出の作品になったと思う。
CHEBUNBUN

CHEBUNBUNの感想・評価

3.7
【アピチャッポンの「山月記」】
『MEMORIA メモリア』スペース準備の一環でアピチャッポン・ウィーラセタクン監督の代表作『トロピカル・マラディ』を観た。本作は、カイエ・デュ・シネマが2000年代のベスト3位に選ぶ作品であり、本紙が本格的にアピチャッポン監督を持ち上げるきっかけとなった作品である。そして我々日本人にとっては、学校で多くの者が習う中島敦「山月記」の映画化として有名な作品だ。ということで感想を書いていく。

兵士と現地人の交流を描いた前半と「山月記」パートに本作が分かれている。第一部では兵士と現地人のキラキラした日常の断片が描かれる。兵士は死体と写真を撮ったり、仲間と談笑をしたりする。都市部では、労災が起きそうな危険な氷の切り出し作業や、歌のショー、物売りの活気が描かれている。その中で兵士は現地人と仲良くなり、恋人に近い関係になっていく。映画館では、ゲラゲラ笑いながらも下半身では密なコミュニケーションが取られている。でも、二人は結ばれることがない。

第二部では、森の奥でトラの亡霊をと対峙する男の話となっている。中島敦「山月記」を知っていると、挫折した李徴が虎となってしまい、その記憶を旧友の袁傪に託そうとする切ない話が、過ぎ去った輝ける青春を必死に記録に残そうとする物語に置換されており、熱気あふれる前半と静寂が包み込む後半のコントラストに魅了される。

そして虎と対峙する場面の霊的存在の、心地よさは『ブンミおじさんの森』に繋がっていることが分かる。正直、『MEMORIA メモリア』以外の作品は言語化できない独特の印象があり、私では太刀打ちできないのですが、美しかったことだけはお伝えしたい。

ちなみに、本作では広場でエクササイズする場面があるのですが、これがめちゃくちゃ面白く、バイブス上がるのでやはり劇場でまた上映してほしいですね。
sonozy

sonozyの感想・評価

4.0
アピチャッポン先生による2004年作。
原題『Satpralat(=Monster/怪物)』
英題『Tropical Malady(≒熱帯の病)』

前半・後半に分かれてます。
前半は、中島敦(愛称Nakajima Ton 1909-1942)の『山月記』の引用(人間は誰でも猛獣使い。内なる猛獣を調教するのが人間である。…的な内容)から始まる。
森林パトロール隊所属の兵士ケン(バンロップ・ロノーイ)が家に訪れるようになり、親しくなった若者トン(サクダー・ケーオブアディ)とのBL的な物語。
氷屋で働くトンにトラックの運転を教えるケン。
2人の雨宿り、映画、膝枕、おばちゃんに案内された洞窟探索、バイク二人乗り…
エロチックな別れのシーン。トンは暗闇に消える。

後半は一転、A Spirits Path(≒魂の道)というタイトルと虎の絵から始まる。(タイの小説に触発されたものとのこと)
家畜や人を襲うという虎を探しにジャングルをさまよう兵士(バンロップ・ロノーイが演じる)。
虎に変身していたらしい全裸男(サクダー・ケーオブアディ)を発見。乱闘となり意識を失った兵士は崖から落とされるが何とか歩き出す。すると話が出来る猿が現れ、虎(全裸男)について兵士に語る。
夜、虎を捉えるべく発砲した兵士は…

前半と後半は連続しているのか、表裏なのか、現実と寓話なのか…言葉にするのは難しいですが、さすがアピチャッポン先生のスピリチュアルな世界に浸れる作品です。

カンヌ国際映画祭: 審査員賞
東京フィルメックス: 最優秀作品賞
カイエ・デュ・シネマ: 2004 Best Film
["僕の心をあげるの忘れてた"] 90点

大傑作。2003年カンヌ映画祭コンペ部門出品作品。タイ映画はベルリン映画祭との相性が良く、そちらに頻繁に出品されてきたが、本作品は恐らく初めてカンヌのコンペに入ったタイ映画だろう。いきなり皆大好き『山月記』の引用句"人間は誰でも猛獣使い"が登場するが、"Ton Nakajima"として引用されるので最初は誰か分からなかった。二部構成になっており、前半は田舎町に配属された兵士ケンと現地に暮らす青年トンの友情以上恋愛未満な日々を綴っている。いきなり草原で死体を発見した部隊が死体と一緒に記念撮影するというシーンで始まるが、アピ先生なので特に問題なし。トン一家とケンでご飯を食べるシーンや、乗り合いバスとトラックの荷台で会話するシーン(ここ好き)などの視線の移ろいが良い。あと、ニケツも尊い。途中で"前世を覚えてる俺のおじさん覚えてる?(Remember my uncle who could recall his past lives?)"というセリフがあり、『ブンミおじさんの森』の英題"Uncle Boonmee Who Can Recall His Past Lives"そのまますぎて吹き出してしまった。アピ先生の映画は全部繋がってるみたいなこと誰かが言ってたけど、マジなんすね。

後半はようやく現代版『山月記』となり、ケン…と同一人物かは不明だが、同じバンロップ・ロムノイが、夜な夜な旅人に取り憑く虎の幽霊を狩るために、独りでジャングルの中に入っていく。"その声は、我が友、李徴子ではないか?"など言うはずもなく、兵士とシャーマンの静かな精神の削り合いが描かれる。心が直接ぶつかり合うのは前半の恋愛とも似ていて、それが善に振れるか悪に振れるかの違いなんだろう。明るさと温かさのあった前半と、暗く冷たい後半は、伝説のある湖へと向かうトンネルやトンが消えた暗闇によって接続されているようにも見え、天国と地獄が表裏一体となっている世界の構造を感じるなどした。
pherim

pherimの感想・評価

4.1
ゲイ青年のユーモラスでのどかな恋愛模様を描く前半から、
鬱蒼とした夜の森奥で虚実人妖一切が変容しだす後半へ。

通常の「映画」文法に沿う解釈から最も遠い鑑賞体験。
葉音に水音、吐息と眼光。


冒頭に中島敦『山月記』の一節が登場する本作、いったいアピチャッポンはどのような経緯で『山月記』を知り、何語で読んだのだろう。というかそもそもが虎なんだよね、人虎。唐の古典由来。タイ族もいまのチャオプラヤー川流域まで南下を始める前は雲南辺りにいたわけで、ルーツを共有してはいそう。(2016.2.14)
>|

あなたにおすすめの記事