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夕陽の群盗のslowのレビュー・感想・評価

夕陽の群盗(1972年製作の映画)
4.5
長期化する南北戦争に疲弊するアメリカ。若者達は強制的に軍隊へと駆り出され、ディクソン家の息子ドリューのもとにも兵士らが訪れていた。しかし、ドリューは既の所で徴兵を逃れることに成功。そのまま遠くに身を隠すべくひとり旅路を急いでいたのだけれど、その道中で不良少年ジェイクに目をつけられてしまう。

それぞれの目的のために旅を共にすることになる、真面目な坊ちゃんドリューとヤンチャで粗暴なジェイク。ジェイク役のジェフ・ブリッジスの若々しさ。これデビューか間もない頃かな。そして、ドリュー役のバリー・ブラウンは顔がほぼゴズリング。
蓋を開けてみれば邦題から想像も付かない、馬鹿馬鹿しい若者ノリと緩いテンポでまったり時が過ぎていく斬新な西部劇だった。『さらば冬のかもめ』『股旅』など好きな人には最高にハマる作品かも。その緩さをシンプルでスローなピアノの旋律が緩く緩くリード。低予算故か、そのメロディばかりが繰り返し流れてくるのだけれど、それが物語に完全に合致し世界観の構築に貢献していた。
そのメロディが素晴らしいのは、緩さだけではなく切なさなど哀情も内包しているところ。戦争が影を落とし、泣きたくなるような悲惨な出来事が若者達を翻弄した時代。それを忘れてしまいそうな展開が繰り広げられても、その旋律が響けば一気に空しさが胸に溢れてくる。この曲作った人凄いよ。
さらにカメラの仕事も美しく印象的。好物の引きのショットの多さもたまらないけれど、人物との距離感がとても良い。カメラマンのゴードン・ウィリスは『ゴッドファーザー』シリーズのカメラマンとしても有名な方のようで、何かその情報だけでも凄く説得力があった。

若者達は旅の果てに何を見るのだろうか。この青春物語は喜劇であり悲劇であり、他のそれとは一線を画す。ロバート・ベントンの傑作だと思う。
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