もとまち

修羅のもとまちのレビュー・感想・評価

修羅(1971年製作の映画)
4.2
人間のありとあらゆる「業」をこれでもかと叩き付け、本当の地獄はこの世にあるのだとうそぶく...最狂にペシミスティックな残酷時代劇。どうしようもないほどの憎しみに支配され、修羅の道へと堕ちていくひとりの浪人と、人並みの生活を送るため、他者を陥れてでもしたたかに生き抜こうとする夫婦。彼らは己の目的を果たすためにそれぞれ重い罪を犯し、その因果は巡り巡って最後には皮肉な円環を形作っていく。己の感情あるいは欲望にのみ従い、人の道を捨てた者に待ち受けるのは永遠の闇でしかない。これほどまでに人間の暗黒をまざまざとフィルムへ焼きつけた作品も中々見当たらないだろう。それを助長するかのようなコントラスト強めなモノクロの映像空間が強烈。血飛沫の黒が画面によく映えている。主人公がif世界を幻視したり、唐突に時間が巻き戻ったりするアヴァンギャルドな演出も衝撃的だった。特に終盤の唐十郎登場大連発シーンはシュールの極み。
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