Milan

修羅のMilanのネタバレレビュー・内容・結末

修羅(1971年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

監督 松本俊夫 修羅(1971)

いやもう超がつくほど面白かったし、劇場で見れてよかった作品。

冒頭の御用 の行灯の灯だけがゆらゆらと闇の中で揺れている時に傑作だと確信した。

白黒の時代劇モノということでなかなか敷居は高く感じるが見始めたら驚くほどスルスルと入ってくる。
白黒映画は何本も観たがここまでコントラストが強い白黒映画は観たことがなかった。
そして1カット1カットの画が構図としてキマリ過ぎている。ほんとにかっこよかった。

主役の源五兵衛の鬼気迫る表情もさることながら、子万の美しさ、そして三五郎の憎らしい表情が良かったね。「旦那ァ」が好きすぎる。
先月の頭かな、唐十郎の演劇を観に行って唐十郎本人を気になっていたので若い頃を見れてよかった。

源五兵衛の部屋のシーン。
畳以外は特に何もない、全て差し押さえられた和室を役者のエネルギーで埋めつくしている感が凄かった。
カメラワークも横に回り込んだり、
対面している2人の役者を、1人から180°開くようにカメラを横にパンして対面先の役者に繋げる一連のショットが印象的だった。

妄想と現実をしっかり描くのも面白い。
子万を身請けするかどうかの葛藤や、やいやいと殴り込み百万両を包む布を口で解きバラバラッと畳に撒き颯爽といこうとする。
そうすると家来がそこに登場する。
ここまでを妄想のシーンで撮ったあと、
現実はそうカッコよくはいかない。どっちつかずの曖昧な態度で三五郎に部屋に連れていかれる。
この差をちゃんと描くことで源五兵衛という人間がどんな人物かが見えてくる。

復讐の始まり

2人以外を惨殺する一連のシーンは段階を踏んで殺すという行為に違いがわかる
そして本作全編通してだが血がリアル。
肌の白さと血のどす黒さのコントラストがたまらない。しゃばしゃばな血ではなく、ドロっとした、ぬめっとした血でリアル。

子万と三五郎の濡れ場が完全に寝盗られた気持ちになって複雑だった。

引越し先を訪れてお手製の毒入り酒を勧める源五兵衛の不自然さにニンマリしてしまう。
かと思いきや、あの緊迫感。

家来の別れが切なく、子万の兄が毒で悶えてるシーンのインパクトは忘れられない。
三五郎がその後子万の兄を手にかけるが、人間の尊厳だったり、殺すという行為だったりが同時に責めてくるようで見ていられなかった。刮目したけど。

赤子を殺した時にとうとう行くとこまで行ったな、と感じた。

墓地で紙を上に投げるシーンも好きだ。

樽をバカっと割るシーンがなんカットも複数のカメラから撮影されていてドッキリのリプレイみたいだった。
松本俊夫はあのシーンにどんな思い入れがあるのだろう。
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