イチロヲ

修羅のイチロヲのレビュー・感想・評価

修羅(1971年製作の映画)
4.5
主君の敵討ちに参加するべく、自堕落な生活を装っている浪人が、芸者の裏切り行為により御用金を騙し取られてしまう。鶴屋南北の狂言「盟三五大切(かみかけてさんごたいせつ)」を映画化している、サスペンス時代劇。筆者は歌舞伎版の鑑賞経験あり。

美人局の共謀者たちを斬り捨てたことにより、鬼の仮面を付けられた浪士(中村嘉葎雄)。美人局に成功して、家庭を手に入れながらも戦々恐々とする夫婦(唐十郎&三条泰子)。この両者が、愛憎と因果が入り交じった、不条理劇を繰り広げていく。

葛藤する浪士が、悪事に手を染めるAルートと悪事に手を染めないBルートの選択肢に迫られる。それぞれのシナリオ展開をフラッシュバック方式で見せてくれるのだが、どちらのルートも悲劇へと辿り着いてしまう。

鶴屋南北の原作では、主人公が殺人者であることを隠しながら、義士として討ち入りに参加するのだが、本作では独自の解釈に落としていく。やるせなさと切なさだけでグイグイと牽引させられる、「後に引きずる系」映画の金字塔。
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