木蘭

少年、機関車に乗るの木蘭のレビュー・感想・評価

少年、機関車に乗る(1991年製作の映画)
4.0
 乗り物映画を撮らせたらユーラシア一のフドイナザーロフ監督のデビュー作。
 兄弟2人が離れた街に暮らす父親に会いに行く鉄道ロードムービー。

 輝く日差しの下、走る機関車の瑞々しい事極まり無い映像だけでなく、流れゆく車窓(?)から望む景色には必ず一つ二つ、他の鉄道やトラクター、馬やバイクと動く乗り物が映し出され、それが主人公達の乗る機関車と時に併走し、交差する躍動感たるや!
 乗り物映画ここに極まれり!という感動がある。

 その一方で、鉄道に乗る前と降りた後の家族の物語は、正直眠たい...
 この辺りの描き方のつたなさは、デビュー作だから致し方無いという所か。
 後の、移動する乗り物から降りた後に躍動感を維持する為には人間を動かす!というテリー・ギリアム的な演出方法は未だ希薄だが、この手法にしろ、監督の好みのルーツはインド映画なのかな・・・と、街で上映されていたり、少年が物まねしているのがインド映画らしいとパンフレットで読んで感じた。

 乗り物のみならず映し出される風景がまた素晴らしくて、ソ連末期のタジク共和国の伝統と近代が混ざった田舎の人々の暮らしの様子が、今となってはタジキスタン版昭和慕情的な姿なのだろうけど、貴重だし味わい深い。

 出来ればカラーフィルムで観たかったけれど、このモノクロの色合いも又当時のソ連の色で、お好きな人には堪らないのだった。
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