えそじま

四季を売る男のえそじまのレビュー・感想・評価

四季を売る男(1971年製作の映画)
4.3
あるトラウマや社会的な抑圧によって破滅した男のあまりにも惨たらしい余生と救済的な死。公務中にチ◯ポしゃぶらせてクビになるわ、果物売りサボって酒飲むわ、浮気するわ子供の前でヨメに暴力を振るうわでとにかくまぁ最悪なクソ野郎(ただ嫁も嫁で結構ヤバい)。個人的にはフロイト派なんだが、敗戦後の廃墟から急激な復興を遂げた西ドイツという混乱の地の労働者・中産階級を見つめ、怒涛の勢いで問題作を撮り続けるさなかにサークという天才に出会ったファスビンダーという天才が、ルソー的な観点を一貫しているのには納得せざるを得ない。そこには常に人間関係の欺瞞、日常的不安が満ちていたであろうし、基本的に心の脆い人間が不条理な抑圧や環境の退廃に皆まで耐えられるとは思えない。人間の弱さという悪意なき罪をファスビンダーはその冷徹な眼差しに秘めたありったけの愛と情熱で抱きしめながら絞め殺す。歪んだ現実にはぶっ飛んだメロドラマによる宿命の一撃がおあつらえ向きなんだと。

過剰に装飾された色彩と俳優の不自然なポージング(これはカウリスマキみたい)、ズーム(これはホン・サンスみたい)。
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