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バイオレント・サタデーのblacknessfallのレビュー・感想・評価

バイオレント・サタデー(1983年製作の映画)
2.9
ペキンパーの遺作なので鑑賞。

人気ニュースキャスターのジョン(ルトガー・ハウアー)はCIAのファセットから彼の友人である3人がKGBのスパイだと告げられる。そしてその3人のうち1人をCIAのスパイに転向させる任務を遂行して欲しいと依頼される。
ジョンはCIA長官の独占インタビューと引き換えに依頼を受ける。

転向させてくれってかなり難しい依頼だよな、こんなこと民間人に頼むかね笑 友達だからって無理だろ笑

任務を遂行すべくファセットの指示で3の人友人、ジョセフ、リチャード、オスターマン、各々の妻を自宅に招くジョン。家には監視カメラが取り付けられファセットが監視する。
転向作戦が開始される。

ここまでサクサク進むんだけど、具体的にどうやって3人の内誰を転向させるのかという細かな指示が全然ない。1人を転向させるなら一人一人、個別に当たった方が成功しやすそうだし、この作戦、なんか端からおかしい。しかも3人は自分達がCIAにマークされてることを察知していて、ジョンが手先になっていると疑っている。ファセットはそれを知った上でこの作戦をジョンに指示した。何故か?

そんな相互不信な面々が集まり友達だからわざとらしく団欒してるけど、やがて不信と敵愾心を隠すことができなくなり、口論から小競合い、そして暴力、やがて銃を使った殺し合いに発展、それにファセットと部下も参戦。ジョンの家は戦場になる。
何なんだよ、この作戦&展開。こうなる可能性は予測できたよな?と思っていたら、まさにこの展開こそファセットの狙いで、ファセットは自分の妻を殺された復讐のためにこの作戦を遂行していたーー!

確かにこれはファセットの復讐になっていて、最後に巨大なCIAの陰謀と意外な黒幕の存在が明らかになる。
これを説明するべきなんだろうけど、あまりに唐突で取って付けたようで脱力してしまいそんな気力はないんだよな😐「何じゃあ、ごりゃあ??」(太陽にほえろ!松田優作殉職の時のトーンで)と心の中で叫ぶしかできなかった。興味のある人は観てね😘

でも、強くはオススメしない。これ紛うことなき駄作であり珍作、トンデモ映画だからな。
全てがチグハグでバランスが悪いし、意外な真相もズッコケ必須モノ。空中分解した『ユージアルサスペツ』だよ。
"遺作に名作なし"とはよく言ったもんだけど、これはまんまそうなんだよ笑

そもそものところ、こんなサスペンスはペンキパーには合わない。ペンキパーはむさ苦しい男(漢)が社会や時代に抗い破滅しながら自身の矜持に殉ずる、むさむさに男(漢)臭いエキスが画面に迸る男(漢)汁映画こそ本義なわけで、こんな状況や陰謀に巻き込まれて翻弄される男(not漢)の話をうまく撮ることはできない。
それにルトガー・ハウアーの資質とも合ってない。翻弄されてるんだけどハウアーはいつものニヒルでタフなハウアーなんで事態が深刻化して狼狽える演技はしてるけど、あまりそう見えないんだよな。観てる方も「ハウアーだし何とかなんじゃねぇの」と思ってしまう。

ペンキパーらしさはえぐ味の強い銃撃戦と殴り合い、そしてその見せ場でトレードマークであるスローモーションを多用しているところ。
バイオレンスの巨匠としての冴えが画面支配していて胸が熱くなり鼓動が早くなるほどのクオリティがあった。暫しヘンテコな話運びで釈然としない違和感を忘れることができた。
定番のがっかり遺作だったけど、トビー・プーパーの遺作『悪魔の起源 ジン』よりアイデンティティはしっかり刻印されてたから良しとする😏
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