まっつん

トルクのまっつんのレビュー・感想・評価

トルク(2004年製作の映画)
3.2
誰しもが遅刻されてイラッとした経験ってあると思うんですよ。「チッ、なんだよ、こっちは時間通りに動いてんのに」って感じで。僕なんかも割りかしそういうタイプでして、人の遅刻にイラついてしまうことがたまにある訳です。で、10分15分の遅刻でも結構イラッとくると思うんですよ。しかし、これが4時間とか5時間の遅刻になってくると、もう怒る気も失せて笑うしかない...なんかこっちも楽しくなってきたわってことあるような気がするのです。「そこまでするなら存分にせい!」みたいな。「トルク」はそういう映画です。

一言で言うとバカが作った映画です。しかも筋金入りのバカが。ワイルドスピードのバイク版といった趣の作品なのですが、ワイルドスピードが高尚な作品に見えてくるほど偏差値、精神年齢ともに低いです。ほんっとうにバカバカしくて、ほぼ全ての人類が開始30秒で「あ!バカが作った映画だ!」って気づくと思います。ちなみに「2004年の最低映画」に選ばれたこともあるとか。まぁ、ねぇ....

なんでこんなにバカなのか?というと、シンプルに「監督の資質がそうだから」ってことです。監督のジョセフ・カーンという人はMVの大御所なんですね。ブリトニーの作品とかを作っていた人なんですが、彼に限らずMVとかCM出身の映画監督には一定の「手癖」があると思います。例えば、バックライトがパァァァと入っていたり、西日がビガァァァと差していたり、画面のコントラストが強かったり、カッティングが無駄に早かったり、やたらとセクシー水着美女が登場したりなどなど....言ってみれば「ギラギラ感」が強い。この「ギラギラ感」ってCMやMVであればカッコよく映えるのですが、こと映画になると途端に軽薄でバカっぽい感じに見えてくる....ってことはあるんですよね。しかし、CMやMV出身でも堂々たる「映画らしい映画」を撮る人だっているわけで。リドリー・スコットとかデビッド・フィンチャーとか。特にフィンチャーなんかは「映画らしい映画」の中に、いいバランスでMVっぽさを挟み込んだりもしますよね。その点、本作はジョセフ・カーンのMVっぽい手癖「のみ」で出来てしまっているので、それはもうねぇ....バカっぽいわけですよ!

ストーリーがあるっちゃあるんですけど、画のバカバカしさが圧勝してしまうので、ほぼほぼ何の話かは分かりません。チンピラどもがバケモンみたいな改造バイクで大暴れするだけ!なんか文句あっか!ひたすら90分間、MVっぽい画と演出の連発。どこからどう見ても軽薄な映画に見えるわけです。そこにプラスして、金髪美女とゴス美女のタイマンがあったり、バイクのエンジンをかけただけで後ろの人が吹き飛んだり、バイクが通り過ぎたら道端のオネェちゃんのスカートが捲れ上がったりと、それはそれは楽しいシーンの連発であります。セクシー水着美女たちによるバイクウォッシュもしっかり入れ込んでおり(しかもカットバックされるのはサーバーから飛び出すビール!)、ジョセフ・カーンって本当に頭が悪いんだなと。しかし、ここまでやってくれれば一周回って愛嬌があって憎めない映画になってきます。なんだかんだで凄く楽しんだ作品です。

とは言え、観た後には何も残りません。こうやって書いている間にも、どんどん記憶が消えて行く...もう一回見直そうかな...