半兵衛

ガンファイターの最後の半兵衛のレビュー・感想・評価

ガンファイターの最後(1969年製作の映画)
3.0
全盛期は華やかだった西部劇も、1969年になるとここまで陰惨になってしまうのか…。二十年間も保安官として街を守ってきたウィドマーク扮する主人公はあまりにも正義感が強い上に街の裏表をよく知りすぎたがゆえに街の人からは疎まれ、市長や議会からはやり方が乱暴すぎるとしてちょっとしたトラブルを問題視されて保安官をクビにされてしまう(もっとも何かあるとすぐ手を出すウィドマークにも問題はあるのだけれど)。周囲の人間から白眼視され追い詰められるウィドマークの姿に新しい映画の波に取り残された西部劇の状況がダブりやるせなくなる。

ただそんなドラマ重視のスタイルの割に主人公以外の登場人物は記号のような存在にしか描かれないため、肝心のドラマに重みを感じられないのが難点。主人公を慕う青年のエピソードは癒されるけど物語に何の貢献もしていなし彼の恋人のエピソードなんて何の意味があったのと思ってしまうほど。唯一ウィドマークを好きになったヒロインレナ・ホーンとの大人同士ならではの静かな関係性がビターな西部劇に深みを与えている、だからこそあのラストが切ない。

敵味方ともにボロボロになりながらの銃撃戦、ラストのウィドマークの死に様にニューシネマの影響を感じさせる。

美しいカラー映像が寂れ行く西部劇物語に彩りをもたらし味わいを深めていく。

ちなみに主人公のリチャード・ウィドマークが街を暴力で統率するという構造は、『許されざる者』のジーン・ハックマンに継承されているのも興味深い。
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