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プレッジのnoteのネタバレレビュー・内容・結末

プレッジ(2001年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

ある日、少女の惨殺死体が発見される。引退間際の刑事ジェリーは、娘を殺された母親と犯人を探す約束を交わし、捜査に乗り出す。知的障害者が逮捕されたが彼は自殺。事件は解決したかに見えたが、ジェリーは別に真犯人がいると感じ、定年後も事件の足跡を調べ、真相を追い求めていくうちに妄想の世界の虜となっていく…。

俳優ショーン・ペンの監督第3作目。
初老の刑事が執念で殺人犯を追う末に、彼の精神が崩壊していく様を描く。
そしてサスペンス映画にあるまじき結末。
謎が解けない徒労感が強烈な作品だ。

平和な田舎町で起こった少女殺人事件。
定年退職した刑事ジェリーは、被害者の母との約束を守るべく、綿密な聞き込みで捜査を続ける。
さらには似た事件が発生した地域のガソリンスタンドを買って、わざわざ引っ越してまで腰を据える。
ジェリーは老後の余生や財産まで犠牲にして、長年の刑事としての誇りを賭ける。

妻も子もいないジェリーの行動は周りの人間には理解されず、元同僚からも現役を退いた心の空白を埋めようとしていると思われているのが寂しい。
捜査に全く進展がない中、ジェリーは夫のDVに傷ついた女性ロリと幼い娘と出会い、お互いの孤独を埋め合わせるかのように、束の間の幸せを手に入れ、事件を忘れていくかのように見えた。

だが、聞き込みによる犯人の特徴に合致する人物が現れ、ジェリーの心に火がつく。
共に暮らすロリの娘に、その犯人と思しき男が近づき、その男の犯行を確信したジェリーは、あろうことか、ロリの娘を囮にして対峙する事を決意する。
かつての刑事仲間に応援を頼み、娘を一人にして、木蔭から長い時間待つが、男は一向に現れない。

結局、あきれた刑事仲間がロリに連絡、ロリは娘を危険に晒したジェリーを激しく非難し、彼の元を去ってゆく。
その頃、犯人らしき人物は、車で移動中に大型トレーラーに激突して車ごと炎上していた。
再び真相は闇の中へと消えていく…。

恋人も刑事仲間の信頼も、刑事としての誇りも全て失い、心が壊れ、廃人のようになったジェリーが、寂れたガソリンスタンドに腰かけて、憑りつかれたように「約束したんだ…」「絶対にあいつだ…」と一人ブツブツと呟く姿が強烈。

序盤以外、大した盛り上がりもなく、淡々とした進行が難点。
それを救うのは監督の人望で集まった豪華キャストの面々の確かな演技力。
ジャック・ニコルソンの徐々に狂気を増す繊細な演技も流石だ。

サスペンス映画だけに、最後には被害者家族との約束を守り、ジェリーに犯人を捕まえて欲しかった。
ロリと娘を守り、ジェリーを疑っていた皆の信頼を取り戻すハッピーエンドだろうと高を括っていたため、その予想を裏切る展開には驚かされる。

一見、真犯人捜しのサスペンスものと思わせておいて、実際は妄執に囚われていく一人の老人の悲劇。
真犯人らしき男が、はっきりと犯行を確信させるような事実は描かれない。
全ては現役を退いたジェリーの刑事としての勘なのだ。
映像だけでは真犯人が本当に存在するのかどうかも定かではない。

「必ず犯人を捕まえる」と誓った約束の使命感の重みに取り憑かれてしまうジェリー。
他人に期待され、自分は信じられている。
そして自分には刑事としての能力があると信じている。
信頼は、誰にとってもモチベーションになるだろう。
しかし、自分が正しいと信じている行為の結果が永遠に奪われることの何と虚しいことか…。

正しいことをしていても、努力を重ねていても、「必ずしも報われるわけではない」という、残酷な人生の真理の一部を描いた秀作である。
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