みーちゃん

そして人生はつづくのみーちゃんのレビュー・感想・評価

そして人生はつづく(1992年製作の映画)
4.7
1990年のイラン地震の被害を写すだけでもインパクトがあるから、ドキュメンタリー形式で撮影すれば、誰が撮ってもそこそこ面白いんだろうな。なんて、観る前に一瞬でも考えてしまった自分が恥ずかしい。

『友だちのうちはどこ?』のアハマッド君の安否確認の旅で、"セミ・フィクション"ということになっているけれど、綿密に計算された作品だった。

街や人々を単に流しているだけに見えるシーンでも一切の無駄がない。要らないショットが一つもない。

そして、どうやって撮影したのだろう、と思う絶景からの超ロングショット。そこから登場人物の表情だけでなく、内面にまで一気にフォーカスするクローズアップショット。普通なら上手く繋がらないような遠近差の切り替えが、観客の視点や感情にピタッとはまり、とても自然で効果的。静かでありながら熱いカメラワーク。アッバス・キアロスタミ監督の強くて優しいメッセージを感じた。

特に坂道を上ったり下ったり、立ち止まったりしながら進む、ラスト10分間は、心に残る大好きなシークエンスだ。

あと、全ての会話シーンが素晴らしい。大人と大人、子供と子供、大人と子供、人々の間で何気なく交わされる、素朴でありながら洗練された会話の一つ一つに、心が洗われた。

※本作をすすめてくれて、ありがとうございました。やっと観ることができました。