てれ

そして人生はつづくのてれのレビュー・感想・評価

そして人生はつづく(1992年製作の映画)
3.8
現実と映画の中との境目がふわっとしていて不思議な感覚になる。

「友だちのうちはどこ?」に出演した子役達の住む村が地震で甚大な被害を受け、彼らの安否を確認しに混沌の村を訪問した……というアッバス・キアロスタミ監督の実体験をもとにした続編の映画だそうだ。ここでセミ・フィクションというジャンルを初めて知った。

地震が起きたコケルとポシュテはイラン北部の村で中央アジア寄りなので、長丈のイラン人よりも、ウイグル人やウズベク人っぽいちょっとカラフルな服装をしてるのが印象的だった。加えて、崩れなかった家の外観を見ていると、その村にはその村だけの生活があったということが感じ取れる。だからこそ地震後の風景が無機質に見えた。でも、なぜか悲愴感も絶望も感じない。

瓦礫がなだれる町並みを照らす柔らかい陽光。木陰の中で泣いている赤子。避難所テントの近くで皿洗いをする少女達。

「親戚が65人死んだよ」「兄さんが下敷きになった」

残された人達は涙を流さず日常会話のように話す。受け入れも否定もしないような話し方で、彼らの人生はつづいている。題名の「そして人生はつづく」がぴったりすぎて、他に何を言うこともできない。

アッバス・キアロスタミ、不思議な映画を撮る監督さんだなあ…淡々と映し出していくスタイルの映画って前はあまり心には響かなかったのに、今はじわじわと趣が染みてくる感覚がする。再度観たくなる映画。
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