イランの名匠と言われるキアロスタミの作品。1990年の大地震の後、以前自身の作品に出演した兄弟の安否を確認しに行った時の監督自身の経験を再現。崩壊した村の様子は地震の容赦ない爪痕を示しているが、そんな中でも結婚して新生活を始める夫婦、懸命に村の再建に取り組む人々など、たくましく前を向いて生きる人々の様子が描かれている。ラストシーンでは、車でも登るのに苦労する坂道を、重い荷物を担いで淡々と登っていく人の姿が描かれ、作品の主張を凝縮して伝えている。説教臭さがなく、"Life, and nothing more"というタイトルにふさわしい淡白な描写が素晴らしい至極の逸品。
