のんchan

そして人生はつづくののんchanのレビュー・感想・評価

そして人生はつづく(1992年製作の映画)
4.0
アッバス・キアロスタミ監督の『ジグザグ道3部作(コケール・トリロジー)』の2作目。再鑑賞。
ジャケ写は美しい色味だけど、中身は驚きの悲惨さが...
1作目の『友だちのうちはどこ?』を観ていないとピンと来ないかも知れません。

この作品は、1990年に発生したイラン北西部ルードバール地震(約4万人死亡、30万人が負傷し、50万人が家を失った)で被災したコケール地域(1作目を制作した場所)も含まれていたため、監督が1作目の出演者の安否確認のために現地を訪れた。それをセミフィクション(監督役は俳優を使っている)としてドキュメンタリー形式で撮影している。

とりあえず、能登半島地震の被災者の方々を思うと辛いシーンが沢山出てきますので、ご覧になる方はお気を付けください。


監督は小学生の息子を連れて車で現地に向かうが、途中の家屋倒壊や瓦礫の山を目にしながら、交通渋滞で先に進めなくなり、脇道に逸れ、人々に尋ねながらも迂回してコケールを目指す。それだけの話ではある。

しかし、まるでドキュメンタリーのようであり、そこには被災した人々の生きる力、前向きさ(家族を亡くしていても4年に1度のワールドカップサッカー⚽️の試合を見たいためにアンテナ📡を立てている若者がいる)に驚いたり、地震発生の翌日に結婚した若いカップルもいる。どさくさに紛れての結婚とは言え、一緒に生きる覚悟を強めたと言っている。
どの話も返ってこちらが勇気をもらえるようだった。

どこまでがノンフィクションなのか不明ではあるが、地震発生の5日目位の設定なので、監督と息子はあまりにも軽装で無防備。陣中見舞いにしては支援物資を積んでいる感じでもなく、ただただ気持ちだけ前のめりのような気がしてしまったのは否めない😔
余震や二次災害を考えるなら、途中の地域に息子を置いて(息子がサッカーの試合を見たいと言ったのもあるけど)1人でコケールに向かったのも不安を感じたけど🤔30年以上前の制作なのと、イランは日本とは安全確保等の基準が違っていて、まだアバウトだったのでしょうけど。

途中で1作目に出演していた小学生(4年後なので成長していた)を見つけ安堵し、主役の子の様子を聞くも知らない(そりゃそうだ)と言われる。
しかし、アンテナを立てていた若者から主役の子が5分前に兄と歩いているのを目撃した情報を掴み、ほぼ目的は達したと言える。

ラストはタイトルの通りに"人生は苦しみがあっても延々と続いて行くもの"と言わんばかりに、イランの自然と長閑さを象徴するかのように、ジグザグ道を空から映し出すロングショットはお見事です。
地震で亡くなった方へ作品をおくるとなっていた。

ある意味、貴重な作品です。
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