自作で主人公を演じた子役の生存確認をするために大地震直後のイランに訪れるお話
ドキュメンタリー的なフィクション映画。カメラの映し方や物語は劇映画のロードムービーなのだが、映画の舞台は実際に大地震が発生した後のイランであり、町中の様子や出演する人々の様子からは大地震の被害がハッキリと目に見えて現れている。境界線が曖昧な多重構造のメタフィクション的な感覚が面白く(劇中では「本作自体が映画であり、フィクションである」云々映画の登場人物が語り出す)、地震の被害者へのエンパワメント的な映画となっているのも面白い。親族を多く失おうとも結婚はするし、ワールドカップの結果は気になる...フィクションという体裁をとりながらも人々が語る言葉には重みがあり、独特な死生観が現れているようにも感じた。劇映画ながらもドキュメンタリー的でもあるどっちつかずな空気感は中々のもの。そしてこれが弟子であるパナヒ監督の『ある女優の不在』などの作品に繋がっていくんだろうなと...
そして何よりもラストショットが最高。車が坂道を登ってくる瞬間のあの興奮！
