前作「友だちのうちはどこ?」は終始嘘をつかない少年のロードムービーだったが、本作は冒頭より嘘をつくことで切り拓かれていくロードムービーになっているのが面白い。
そもそも映画自体が嘘をつく媒体であることをキアロスタミは利用し、前作の登場人物を演じた人間たちもまた人生を歩んでおり、実際に起きた地震の被災者であることを描く。その狙いが映画にスリリングな魔法をかける。
前作同様に印象的なジグザク道が登場するが、オンボロ車で最大限加速しないと登りきれるかどうかわからない。それを遠景ショットで観察してみせるラストショットもとてもいい。