櫻イミト

キング・オブ・キングスの櫻イミトのレビュー・感想・評価

キング・オブ・キングス(1927年製作の映画)
4.0
キリストの映画と言えばリュミエール兄弟の「キリスト受難」(1897)から始まり、「イントレランス」(1916)のユダヤ編など100本が以上作られ続けてきた。その初期長編決定版と言えるのが本作で、約5億人が観たとされる。デミル監督“聖書三部作”の二作目。「十誡」(1923)と「暴君ネロ」(1932)の間の作品。

キリストの磔刑前の最後の数日間を描き、中間字幕の大部分は新約聖書を引用。ロン・チェイニー主演の「オペラの怪人」 (1925)と同じく二色法テクニカラーをオープニングと復活の場面で使っている※。

物語は既に知っているものだが、“動く宗教画”と呼びたくなるような映像が素晴らしい。映像面では、現代にいたる聖書映画の中で最も好みだった。「十誡」の前半と同様にクライマックスのスペクタクル特撮が物凄い。空を稲妻が駆け巡り、ゴルゴダの丘の麓は大きく地割れする。ローマ神殿の門は途方もなく巨大で、そのスケール感は「イントレランス」のバビロンに迫るもの(後に「キングコング」などで使いまわされる)。衣装も室内装飾も絢爛豪華で、叙事詩として完璧な映画だと感じた。

個人的には、デミル監督の「十誡」と本作、そしてムルナウ監督の「ファウスト」(1926)が、サイレント期の三大特撮スペクタクル映画となった。サイレント期のモノクロ画面は“奇跡”の表現にとって最高の親和性がある。現代のCG映像でも叶わない、たまらない魅力を感じている。

※コスミック出版の10枚組DVDのバージョンは、オープニングはモノクロで復活場面のみカラー。
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