2019年初サイレント映画!(笑)最近MGMやWBの歴史にまつわるドキュメンタリーを鑑賞して、さらにクラシック映画への興味が湧いたので、'20年代の無声映画にもチャレンジしていこうと思います。
イエス・キリストの半生を描いた、セシル・B・デミル監督の出世作といっても過言ではない作品。彼を主役に据えた映画としては、ほぼ世界初といっても過言ではないかと。(D・W・グリフィスの『イントレランス』('16)にはちょこっとしか登場しないので!)
当時としては莫大な予算をかけて作り上げたスペクタクル作品。戦前に、しかもまだトーキー誕生前夜にここまでのスケールの作品を作り上げていたなんて、改めてハリウッドのクリエイター陣に頭が下がる思いです。
冒頭、不貞に明け暮れるマグダラのマリアがイエスの元に赴き、改心するところから始まるのですが、そこからの展開もかなりテンポよく説明もシンプルに進んでいくので、私のようにキリスト教に造詣が深くない人でも親しみやすかったです。特に、そこまで長尺じゃない点も魅力。サイレント映画なので字幕が重要なのは言わずもがなですが、本作ではセリフをいずれも聖書の一節から引用しています。それくらい忠実な映像化ということなのでしょう。
『ゾラの生涯』のジョゼフ・シルクドラウトがユダ役である点くらいで、ほかの役者さんは流石に古すぎてどの方も存じ上げず...(笑)。でも主役イエス役のH・B・ワーナーが、壁画からそのまま出てきたようにイメージぴったり。憂いを帯びた瞳が印象的で、粗い映像の中でもひしひしと伝わってくる何かがありました。
受難のシーンはモノクロといえど、やはり目を背けたくなりますね...。十字架のシーンの後、雷鳴とともにエルサレムの人々が災害に見舞われるシーンは、音がないのにものすごい迫力。そして復活とともに、画面がカラー(といってもテクニカラー方式ではなく、おそらくフィルムに直接色を塗っただけ?)になる場面があって、さぞ当時の観客は驚いただろうなと...!とっても粋な演出でした。