次男

美しい人の次男のレビュー・感想・評価

美しい人(2005年製作の映画)
4.3
どの一日、どの10分を切り取られたら、それが自分だって言えるかなあ。というか、「それが自分だ」って自分で認められる10分なんて、あるのか。でも僕は、10分でどんなひとかって、決めたりするよ。僕も決めるし、他人も僕を10分で品定めしてるよ。

僕は、ここで描かれた9人の女性の、それぞれ10分と少ししか彼女たちのことを知らないし、彼女たちも、僕がこの10分のみをもって、自分たちがどんな女性だと決められてるなんて知らず。

でも実際もそんなもん、だもんな。いつだってどこかへ向かう道の途中、というか、かくありたいと思ってる自分像への途中で、でも「どこかの道の途中の人」って、そう思ってもらえることなんてないんでしょ。道の途中でしか、人とは会われへん。不本意でもなんでも。

思えば、昨日昼間から飲んでマジレスし合ったあの子も、数日前出会ってかわいいなと思ったあの子も、数ヶ月前一緒にご飯を食べてそこから会えてないあの子も、この映画を教えてくれたあの子も、あの子も、あの子も、あの子も、なんも知らねえんだなあ、俺は。なんも知らねえっつーか、知りえないというか、例えば何を悩んでるのかとか、どんだけ話しても、どんだけ話してなくても。
彼女たちもどこかへ行く道すがらで、きっと「いまがきみのすべて?」と聞かれたらひどく不本意なんだろうけど、でも僕が知ってるのは今、とか、その時のきみだけです。

◆◆

なんでこんなに目を離せなかったんだろう…。とか言ってみたけど、正直わかってるんだよ、なんか、なんだろう、女の子を好きになる気持ちを思い出したんだ。誰かを好きやなあって思うときって、漫画やらドラマやらみたいな劇的なものやなくて、特別じゃない10分のせいだったりするし、好きな女の子を改まって「好きやなあ」って思うときだって、そんな感じだ。

抜き取られた10分ではなにもわからないけど、抜き取られた10分以上のことなんか、わかれないのかもしれないなあ。

◆◆

僕は女の子がすごく好きで、女の子を好きになるのがすごく好きだ。恥ずかしげもなくそう思ったし、これを観たら、はははそりゃ好きになるわなって思ったな。僕はたぶん、いつもこういう10分で誰かを好きになってる。
この腑に落ち感の理由は、言葉にはできんし、確信を持ってる気がしてるのも今だけかもしれんけど、女の子を好きになる理由が、わかったような気がしたんだよ。

まあきっと明日にはわかんなくなってるけど。

◆◆

僕が思い至ったのはそんなことだけど、かたや、女性が観たらどうなるのかな、この映画。どんなこと思うのだろう。女の子たちは、女たちは、これを観てなにを思うのか。想像つきそうで、まったく想像つかないや。
知りたいけど、「男は理解しないでいて!他人事でいて」らしいし、今回もまたそれ腑に落ちるから教えてくれなくてもいいけど、でもやっぱりこっそり教えてほしい。
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