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地下水道のharuのレビュー・感想・評価

地下水道(1956年製作の映画)
4.5
果てしない絶望。

第二次世界大戦末期のワルシャワ。ドイツ軍の攻撃により追い詰められたポーランドのレジスタンスは、ついに退却を決意。ザドラ中尉が率いる中隊は、地下水道を通って脱出を試みるが…

進むも地獄、止まるも地獄。
アンジェイ・ワイダの抵抗三部作の一つ。全く救いがない反戦映画として、個人的に「灰とダイヤモンド」よりこちらを推します。序盤に若干戦闘シーンはあるものの、メインは地下水道。一行はゴールを目指してひたすら歩き続けますが、ここには絶望しかありませんでした。
暗闇と汚物しかないこの道はいつまで続くのか。閉塞感と疲労で心身共に蝕まれていくうちに、とにかく早く外に出たい!新鮮な空気が吸いたい!という気持ちでいっぱいに。ところが光が見えても地上に出ればドイツ軍が銃を構えて待ち伏せしていたり、出口に爆弾が仕掛けられていたり、鉄格子が嵌められていたりして、どの道を進んでも行き着く先は同じ。たとえ生き延びたとしても、次作「灰とダイヤモンド」で描かれているように、ポーランド市民はその後も戦い続けることになる。
他国に翻弄され続けたポーランドでは、多くの市民が命を落とした。本作でその重さを実感しました。
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