うめ

ディパーテッドのうめのレビュー・感想・評価

ディパーテッド(2006年製作の映画)
3.9
 アカデミー賞関連作、鑑賞その3。香港映画『インファナル・アフェア』のリメイク。スコセッシ×ディカプリオのコンビとしては3作目。第79回アカデミー賞では、作品賞、監督賞、脚色賞、編集賞を受賞。特に監督賞を受賞したときは、壇上にコッポラ、ルーカス、スピルバーグがいて、「あぁ、愛されてるなぁ、スコセッシ」なんて思ったのをうっすら覚えている。

 スコセッシの出自がそうさせるのか、こういう裏社会とか闇の世界を描くのが非常に上手い。(そう言えば、TVドラマの『ボードウォーク・エンパイア 欲望の街』もそういう裏社会が舞台ですよね。)とにかくかっこいい。冒頭から映像で魅せるところなんかは、本当に安定感がある。近年のスコセッシ作品はそんなに好きではないのだけれど、今作はスコセッシ×デ・ニーロのコンビを思い出したりしてどきどきしながら観られた。

 またキャスティングもうまい。特に主演の二人。個人的にはマット・デイモンが真面目な警官で、ディカプリオがギャングのような印象があったのだけれど、本作では正反対の役どころ。でもそれが二人の演技も相まって、上手く作用しているから面白い。他のキャストも豪華で、マーク・ウォールバーグ、アレック・ボールドウィン、マーティン・シーン、そして何と言ってもマフィアのボスであるフランク・コステロ役のジャック・ニコルソン!髪が若干ボサボサでも貫禄あるボスを見事にこなしている。ヒロインの分析医役のヴェラ・ファーミガも綺麗で印象的。これだけ豪華な俳優が出演していながらも、ストーリーや役から誰一人はみ出ることがなく、調和しているのも見事。

 『インファナル・アフェア』未見なのでわからないが、今作はだいぶストーリーを詰め込んでいる印象を受けた。(知らぬ間に一年経ってたりするし…)確かにスリルや登場人物たちの因果や心情は演出のおかげもあってよく感じ取ることはできたが、もっと時間をかけて、展開や人物の関係をじっくり追うと、もっとそうしたドラマ的な要素が表現できたかもしれない。でも、映画一本分だと時間的限界があるので、しょうがないのだが。

 皆が予想できない展開へと事が進むのも、スコセッシの特徴かもしれない。今作も結末へ向けて、観客も登場人物たちも予想できない方へと進んでいく。マフィアに育てられた男とマフィアから足を洗いたい男の運命が交差するとき、何が待ち構えているのか。是非、本編でご確認を。上映時間は長いが、観る価値はもちろんある。

 ちなみに、今年のアカデミー賞ではディカプリオが主演男優賞にノミネート。今年は圧倒的存在がいないため、有利とも言われているが…さて、どうなる。
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