YYamada

ディパーテッドのYYamadaのレビュー・感想・評価

ディパーテッド(2006年製作の映画)
3.7
【戴冠!アカデミー作品賞】
第79回 (2006) アカデミー4部門受賞
 (作品/監督/脚色/編集)

〈見処〉
①汚職まみれの壮大な「ネズミ探し」
・『ディパーテッド』=「死んでいった者たち」を意味するバイオレンス映画。
・2002年の大ヒット香港映画『インファナル・アフェア』のリメイク作品。
・香港の闇社会と仏教観念を描いたリメイク元に対し、本作はボストンに根付いた格差社会が生み出す犯罪の連鎖に背景を置き換え、外国映画のリメイク作としては初のアカデミー作品賞受賞作となる。
・物語は、ボストン闇世界を牛耳るアイルランド系のドン(ジャック・ニコルソン)とボストン市警に潜入した内通者(マットデイモン)、犯罪組織に潜入した警察官(レオナルド・ディカプリオ)の数奇な運命を描いた犯罪サスペンス。
・内通者2名は、それぞれの任務を遂行するため、潜入先のメンバーに素性を秘匿すると同時に相手組織に蔓延る「ネズミ」の探索活動は、非常に緊張感が高く、見ごたえがある。
・学術都市で文化の色濃いボストンであるが、『ザ・タウン』『パトリオット・デイ』『スポットライト 世紀のスクープ』など、ボストンの闇を描く映画も合わせて鑑賞すると本作との相互理解も出来、良いと思う。

②「無冠の帝王」スコセッシの戴冠
・1976年『タクシー・ドライバー』以降、2019年『アイリッシュマン』までスコセッシ監督は、アカデミー作品賞と監督賞をそれぞれ9度のノミネートを受けながら、両部門ともに受賞は本作のみ。
・アカデミー受賞に恵まれないながら、『レイジングブル』や『グッドフェローズ』などの傑作を生み出すスコセッシは、まさにアメリカ映画会の「無冠の帝王」。70代後半になっても堪えず進歩的な作風を追及する現在のレジェンドである。

因みにアカデミー監督賞を2回受賞している現役監督のノミネート回数は…
・スティーブン・スピルバーグ (2/7)
・クリント・イーストウッド (2/4)
・オリバー・ストーン (2/3)
・アルフォンソ・キュアロン( 2/2)

③私的解釈…なぜ作品賞に選ばれた?
・同年のアカデミー作品賞ノミネートは、
『バベル』 『硫黄島からの手紙』『 リトル・ミス・サンシャイン』 などの佳作揃いであるが、本作が選ばれたのは単にスコセッシ監督に対する永年勤続への敬意の現れだと思う。

◆アカデミー作品賞 受賞作の中の
 本作のポジショニングは …
★★★☆☆ 芸術性
★★★★☆ 社会風刺・メッセージ
★★★☆☆ ストーリーライン
★★★☆☆ 革新性
★★★★☆ 演技・演出

★★★☆☆ 総合評価 (独断と偏見)
・スコセッシ作品としては平均点だと思うが、長尺の群像劇を緊張感高い作品に仕上げる技量は、歴代アカデミー作品に引けをとらない。
・余談で些末ながら、スコセッシ作品はローリング・ストーンズの楽曲を多用する点に好感が持てる。本作は『Gimme Shelter』がオープニングナンバーを飾る。
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