ヴァイオレンス映画と呼ばれるものは数多くあれど、
緊張感を演出するため、または、派手なアクションを演出するための
お手軽選択肢としての暴力であることが多いと思われます。
そういう意味で、本作における暴力は一線を画しています。
世の中に対するフラストレーションのはけ口として、
タイマンで裸の拳でただ殴り合う同好会をつくる男たちの話。
殴り殴られることで得られる狂気の悦楽。
骨がぶつかり合う音が鈍く響き、血がしぶきをあげて飛び散るさまは、
暴力というよりは、痛みそのものであり、
エンタメというよりは、狂気そのものです。
自分たちの殴り合いだけに閉じていれば良かったのですが、
もともとは社会に対するフラストレーションが発端であるため、
主人公の意思に反してというか、潜在意識に即してというか、
矛先が社会に向かっていくわけです。
そして終盤に、大きなどんでん返しがしくまれ、
すぐさま冒頭を再生せずにはいられないしくみ。
なるほど~とうなりながら2周目を楽しめます。
ここまで緻密なヴァイオレンス映画も他にないかなと。
見終わった後でデヴィッド・フィンチャーと知って、
なるほど納得でした。